化粧品業界の転職ガイド
vol.1化粧品業界の転職事情(企業・業界の動向編)

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化粧品業界の転職事情を紐解く前に。
ここ数年の業界動向を振り返ってみましょう。

経済産業省の生産動態統計によると、日本の化粧品出荷額は2004年以降、1.5兆円程度で推移。2008年のリーマンショックで1.4兆円へとダウン(-6.7%)するものの、他業界に比べれば不況の打撃は軽微(※影響が大きかった自動車業界は-29%。売上高62兆円から最終的に44兆円へ下降)。東日本大震災のあった2011年も、1.4兆円よりダウンすることはありませんでした。

もともと「美に掛けるお金は削れない」と言われてきたように、女性にとって化粧品は生活必需品。不景気になれば女性が働きに出ることが増え、化粧品を使う機会も増加します。デフレの影響で、化粧品単価は下がり気味ですが、その分低額化粧品が売れ、化粧品業界全体のバランスが安定的に保たれている状況です。

化粧品の出荷額の推移

化粧品の出荷額の推移のグラフ

リーマンショックで減少したものの、出荷額自体は2004年頃とそれほど変わらない。

化粧品の支出金額の推移

化粧品の支出金額の推移のグラフ

都内・全国ともにリーマンショック後も消費者の化粧品に掛ける支出は増えている。

最近のトピックス

  • 百貨店系の苦戦とバラエティコスメの台頭(大手も1000円コスメを無視できない状態に)
  • 男性向け、シニア向け化粧品ブランドの拡大
  • 通販化粧品の盛り上がり(広告費の潤沢な大手の参入で中小企業に陰り)
  • アジア、ロシアなど海外への進出
  • 富士フィルムやサントリーなど他業界からの大型参入が相次ぐ

化粧品業界の求人動向
現在は全職種の求人が回復。商品企画と営業は不景気も積極募集。

一方、求人数は不況の煽りを受けて減少しました。大幅な売上ダウンこそなかったものの、国内需要の拡大が見込めない中、企業は自ずと採用活動に慎重になりました。リーマンショック以降、目立ったのは、商品企画と営業職の求人です。化粧品メーカーの最小構成であるこの2職種を採用し、製品の開発・製造を外注することで、リスクを最小に抑えながら市場ニーズに合う新商品をリリースしていくことができるためです。

数年にわたって抑制されてきた各社の求人ですが、昨年頃から徐々に動き出し始めます。震災の影響を注視しながらも、低価格化粧品や通販事業の競争激化や新規事業の立ち上げなどを理由に増員を決意する企業も増え始め、PRやインストラクター、研究職…といった、これまで求人が出にくかった職種でも、一斉に中途採用がスタートしました。現在、紹介会社に寄せられる求人数はリーマンショック直後の2~3倍にふくれあがっています。

リーマンショック後と現在の求人推移

2009年 2012年 商品企画 販促 PR 営業 美容部員 インストラクター・トレーナー 研究

リーマンショック後、
商品開発と営業以外の求人は減少傾向

現在は全体的に求人が増加傾向

女性が多い=欠員募集が生じやすい

女性のイメージ

皆さんもご存じの通り、化粧品業界は、男性よりも女性が多い(営業職と研究職を除く)業界です。そのため、結婚・出産などを機に退職する人、体力的に難しくなって退職する人など…男性メインの職場よりも、欠員が出やすいという傾向があります。

かつて、多くの化粧品メーカーが欠員を社内異動で補い、人件費を抑えていたところから一転、ここ最近はリーマンショックの余波を脱したこともあり、増員して組織を増強する企業が増えています。

そのため、以前よりは欠員補充であっても求人が出やすくなっています

日系老舗大手の求人は?…2012年は転換期

経営の安定性や手厚い福利厚生が魅力の大手企業。外資系の場合、求人はありますが、TOEIC850点(およそ留学2~3年レベル)以上など、高い語学力を求められるケースが多く、応募できる人というのは一部に限られてしまいます。そのため、資生堂やカネボウ、コーセーといった、売上高1000億円以上の日系老舗大手に憧れる転職者は少なくありません。

ですが、従業員数も多く、経営基盤も固まっている日系老舗大手では、依然として欠員時の補充を社内異動で補おうとする傾向があります(企業によっては、社風や風土を維持するために中途採用を極力行わないというところもあるようです)。求人サイトなどを見ていても、日系大手の求人をなかなか見かけないのはこうした背景のためです。

とはいえ、完全に中途採用がないわけではありません。産休や育休、配偶者の転勤などで退職する人が重なれば、当然、中途採用を行うケースもあります。特にここ1、2年は、業界全体で求人が出やすくなったこともあり、これまで欠員募集に消極的だった企業でも求人が開始するなど、少しずつ変化が起きていると言えるでしょう。

この他、大手企業では、新規事業の立ち上げや海外進出などを背景に、中途採用で社外の優秀な経験者を求めることがあります。こうした場合、競合他社にプロジェクトの存在を感づかれないよう、求人サイトや企業ホームページではなく、紹介会社やヘッドハンティング経由で募集を掛けることが多いと言われています。

新規事業の立ち上げや海外進出時など、重要ポジションを求める中途採用では、かなり条件が絞り込まれている場合がほとんど。
例えば、新規にECサイトを立ち上げるため大手IT企業で働いていた経験のある人を採用したり、東南アジアやインドに進出するためアジア圏言語のトライリンガルを採用する、など…特殊なスキル・経験を求められるケースが多いです。当然、該当者も少ないため、企業によっては、「株式会社○○で、××の業務をやっている人」というレベルまで絞り込んだオーダーを、ヘッドハンティング会社に出している場合もあります。

他業種からの新規参入企業も、それほど多く採用は行わない

では、先にご紹介した、他業種から新規参入した大手各社はどうでしょうか。

実際、新規参入する企業の多くは、化学・食品分野で豊富な実績を積んだ企業。一見、社内には化粧品に精通した人員が多くないように思えますが、自社のノウハウを化粧品に転用・応用するケースが多いため、こちらも社内異動や外注でまかなってしまうことが多いと言われています(但し、企業・職種によっては求人が出る可能性もあります)。

老舗大手のグループ会社、新興大手、または優良中堅メーカーの採用は活発

先述の通り、老舗大手の中途採用は、古くから新卒採用を脈々と行ってきたこともあり、やや落ち着き気味。代わってピアスやDHC、ドクターシーラボのような、ここ5~10年で急激に成長した準トップクラス企業では、たびたび求人が発生しています。加えて、老舗大手企業傘下のグループ会社や、通販・バラエティコスメを中心に展開する中堅企業などが、現在求人が出やすい傾向にあります。

準トップクラス企業の魅力

ブランドの知名度は高いものの、社内は少数精鋭で、一人ひとりに与えられる裁量が大きいのが特色。企画の立案や、直接経営陣に提案を行えるなど、貴重な経験を付けられる。加えて福利厚生も充実している傾向にあります。

老舗大手グループ企業の魅力

近年では大手企業がM&Aにより新しく中小企業を傘下に入れるケースが多く、老舗大手グループ企業での求人は増加傾向。親会社と同様の待遇・福利厚生が適用されるため、転職を望む人が多くいらっしゃいます。企業によっては買収されて間もないため、組織作りから関わっていくことができる醍醐味も。

中堅企業の魅力

中堅といえども、バラエティコスメや通販・フルフィルメントといったビジネスモデルを上手く活用し、著しい成長を遂げた企業は少なくありません(例えば20名程度の従業員数で資本金5億円…といった、少ない従業員数でも経営が安定した企業が存在します)。そうした企業では、残業代全支給、高給与など…待遇・福利厚生が大手並みに充実していることも。

もちろん、老舗大手もタイミング次第では求人が出る可能性もありますから、まずはどのような求人が存在するのか、紹介会社等に問い合わせてみるのが良いでしょう。

転機予報

  • 化粧品業界は不況に強いものの国内需要のさらなる拡大は見込みにくい。
  • 各社の採用が活発化しており、しばらくは求人も増加傾向にあると予測される。
  • 但し今後は海外進出に伴い、国内よりも国外の採用ニーズが増える予想。

これまで各社が控えてきた欠員募集も再開され、また、バラエティコスメや通販化粧品が台頭するなど業界内が変化していることにより、求人が活発化。リーマンショック後、最大の転職チャンスが来ているといえるでしょう。

いかがでしたか? 今回は化粧品業界全体の転職事情について解説致しました。

次回は、化粧品業界の転職に関して、今度は企業側・業界側ではなく、転職者側にスポットを当てて解説していきます。転職活動の方法やポイント、みんなが転職時に気にしている情報など…調査結果を基にご説明します。

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