解説 化粧品業界の販売チャネル
バラエティコスメ

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バラエティコスメの業界規模

2017年のバラエティコスメ業界各チャネルの売上は下記の通り。

バラエティコスメ業界合計 2兆619億5700万円

  • ドラッグストア 1兆744億1900万円(昨対比105.4%)
  • 量販店 5137億5300万円(昨対比96.0%)
  • 化粧品店 4737億8500万円(昨対比100.7%)
  • ※週刊粧業2018年1月1日 第3095号より

化粧品全体の売上高3兆6350億6400万円の過半を占めているのが、バラエティコスメ業界。中でも、伸び率は百貨店に及ばないものの、出店数拡大と訪日観光客のインバウンド需要の増加により、ドラッグストアの売上が伸びています。加えて、ドラッグストアや通販化粧品との競合で苦戦気味だった化粧品店も、2018年現在、プラス成長へと転じています。

バラエティコスメ業界の歴史

古い資料を紐解くと、戦前、1910年代には既に多くの化粧品メーカーが価格競争を繰り広げていたようです。その後もバラエティコスメ業界は時代の流れに素早く対応することで発展してきました。
1980年、クリニークが百貨店化粧品の販売スタイルを変えた頃、日本ではコンビニエンスストアが新業態として急成長を遂げていました。コンビニ化粧品の歴史も意外と古く、資生堂やカネボウといった大手メーカーは、その頃から既にコンビニでの販売をスタートしています。
1990年代には化粧品と親和性の高いドラッグストアの出店ラッシュがありました。2000年代にはイオンやイトーヨーカドー、西友といったGMSや、各ホームセンターが続々と店舗数を伸ばし、量販店チャネルも拡大の一途を辿ります。
その後もバラエティコスメ業界は、主にコーセーの『雪肌精』を中心に起きている訪日観光客の爆買いの影響もあり、堅調な推移を続けています。2018年現在、メーカーサイドではインバウンドに依存しない新たな一手が模索され、メンズラインの拡充や若年層向けコスメの販売など、新たなターゲットを取り込む動きが加速しています。

国内のトレンドとしては、2000年代まではファンケルに代表される無添加・無香料・無着色がブームの柱。その後は身体に優しく、香りも楽しめるオーガニック化粧品が勢いづいています。矢野経済研究所の調査によると、2016年度のオーガニック化粧品の売上高は1237億円に達しています。
リーマンショック後しばらく続いたプチプライスブームは収束しつつあり、消費者の間では、ちょっぴり高くて良い化粧品、「プチリッチ」「プチ贅沢コスメ」がブームの中心に。FLOWFUSHIの『Motemascara』や『肌ラボ 極潤プレミアム』のような、バラエティコスメの中でも高品質をうたう商品に注目が集まっています。

バラエティコスメ業界の今後の展望

ドラッグストア・化粧品店・量販店の展望
バラエティコスメの売上の多くを担うドラッグストア。マツモトキヨシホールディングスとサンドラッグ、ツルハホールディングス、ウェルシアホールディングスの“四つ巴”が激しい攻防を繰り返しながらも、出店数を堅調に伸ばしています。結果、ドラッグストアの店舗数は2002年の1.3万店から2017年の1.9万店舗に。今後もさらに増えることが予想されています。
化粧品店は、これまでドラッグストアや通販化粧品に押されていたものの、消費者のカウンセリング回帰に伴い、2014年から2017年にかけて3年連続で業績を伸ばしています。とはいえ、メインの顧客層は50代以上。今後いかにして若年層を取り込むかが、鍵となりそうです。
2017年、唯一売上が減少した量販店では、メーカーとの共同開発やプライベートブランドの開発が進みます。ですが、ブランドの世界観やネームバリューが売上に影響を与える化粧品業界で、GMSのプライベートブランドが売上を伸ばすには、まだまだ課題が多そうです。

男性用・プチリッチ・オーガニック化粧品は今後も成長の見通し
多くのメーカーで注力が進む男性用化粧品は、今後も市場の成熟が続くと予想されています。成長率は微増の101%(矢野経済研究所・2017年調べ)ですが、育毛剤などのヘアケアが低迷する一方、スキンケアやボディケア(ボディシャンプーやデオドラント製品など)といった製品が堅調に推移。こうした男性消費者のニーズ変化から新たな市場が生まれる可能性も多く、様々な企業が「海外進出よりも国内のメンズを開拓する方が効果的」と見ています。今後もメーカー各社の挑戦が続きそうです。
男性化粧品同様、今後に期待がかかるのが、単価の高いプチリッチ製品やオーガニックコスメ。プチリッチ製品の需要は、景気の向上とともに、今後まだまだ続く見通し。一方のオーガニックコスメも、2017年に有名ブランドで成分誤表示の問題が発生したものの、オーガニック全体の人気低迷には繋がらず、今後も右肩上がりの成長が続くものと見られます。

SNSマーケティングが勝敗の鍵
かつて、口コミサイトの登場により消費者の購買行動は大きく変化しました。現在はインスタグラムを中心としたSNSが台頭。人気モデルやコスメフリークの投稿から製品の人気に火が付くことも多く、SNSを活用したプロモーション展開に注力する企業は今後ますます増えていくでしょう。

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