解説 化粧品業界の販売チャネル
通販化粧品

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通販化粧品の業界規模

2017年度の通販化粧品の業界規模
…6063億8600万円

化粧品業界全体の売上3兆6350億円のうち、17%程度を占めており、百貨店化粧品の3149億7400万円のおよそ倍。バラエティコスメに続いて大きな規模を誇ります。

通販化粧品業界の特徴は、その成長スピードにあります。2009年に4718億1000万円だった売上は、わずか5年後の2014年には5900億超に。その後一時的に成長が鈍化したものの、新企業の市場参入が相次いだこともあり、2017年には4年ぶりに前年比103%超の伸びを記録しました。

通販化粧品業界の歴史

1989年代後半、宅配便サービスの発達に伴い、通信販売ビジネスが起こりました。1990年代にはセシールやニッセンなど、現在も残る大手通販企業が台頭。こうした流れに乗るように、化粧品も通信販売で取り扱われるようになりました。

テレビのショッピングチャンネルやCM、雑誌を中心に、当初は海外からの並行輸入品などが人気を博していた通販化粧品。その流れを大きく変えたのは、対称的な二社、ファンケルDHCでした。

ファンケルは、在庫を持たない通販の強みを活かし、無添加の化粧品を販売。当時、化粧品の防腐剤が原因とされる肌疾患が取りざたされていたこともあり、同社の化粧品は社会現象を巻き起こすほどの人気を博しました。

一方DHCは、オリーブオイル由来の化粧品を武器に、試供品提供と消費者の口コミを利用した、巧みなバイラル・マーケティング・スタイルを確立。現在の通販化粧品業界のプロモーション手法の基盤を作り上げたと言われています。

その後、コールセンター機能を請け負うテレマーケティング会社の台頭により、通販化粧品の参入障壁はますます低くなりました。加えて、インターネットの普及により、主戦場はWeb上へ。その後、スマートフォンの普及にも後押しされ、ネット通販の市場は拡大の一途を辿ることになりました。

通販化粧品各社は、顧客と直接接点を持てるよう、Amazonやアットコスメといった大型ECサイト(モール)に出品するだけでなく、自社サイト内にショッピングカートシステムを導入。自社サイトから直接商品を購入してもらうことで、顧客情報を取得し、メールマガジンやDMといったダイレクトマーケティングに繋げ、リピーター層・ファン層を増やす取り組みを加速させました。

アットコスメが登場し、ユーザーの口コミが化粧品の売れ行きに大きな影響を与えたのが2000年代。2010年代にはTwitter、Facebook、そしてInstagramといったSNSが台頭し、「商品に興味を持つのも、購入するのもWeb」という時代が幕を開けています。

こうした中、これまでは店舗で美容部員を通じてしか販売を行ってこなかった百貨店化粧品が、ECサイトをオープンする動きが見られるなど、新規参入が相次いでいます。その一方、オルビスように、新規顧客情報の獲得とブランディングのため通販化粧品企業でありながらも実店舗を構えるところも。消費者行動の変化から、販売チャネルを越えた競争が、今後はさらに激化していくだろうと言われています。

通販化粧品業界の今後の展望

通販化粧品の成長は、PCやスマートフォンといった、ネットデバイスの普及に下支えされてきました。ですが、既にPCもスマホも多くの人が持つようになり、市場が成長期から成熟期へと移行した今、企業は、より高度なマーケティング・プロモーションを行わない限り、売上を伸ばすことが難しい状況にあります。

競争が激化する中、命運を握るのは、InstagramをはじめとするSNSプロモーションです。広告によるプロモーションだけでなく、自社アカウントからの情報発信を通じてファンメイクを行ったり、バズを狙ったりする試みは、今後ますます増えていくでしょう。

加えて、取得した顧客情報を分析し、有効なアプローチ戦略を検討するCRMマーケティングの取り組みも、ますます多角化していく見通しです。近年では、リアルでの消費者との結びつきを強化すべく、メイクアップ・サロンや肌診断のようなイベントを開催する企業も増えています。企業によっては、オルビスやファンケルのように、実店舗運営へと参入する可能性もあるなど、競争の舞台はWeb以外のフィールドにも広がっていくことが予想されます。

加えて、ベンチャー企業が大半を占める通販化粧品業界では、商品ラインナップが乏しい企業も多いです。百貨店化粧品をはじめ他チャネルも通販に続々と参入している昨今、早急に第二・第三のヒット商品を生み出すことが、通販化粧品企業の経営安定には欠かせません。各社ともマーケティング・プロモーションと新商品開発の双方に注力する傾向は、今後も続くものと思われます。

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