5分でわかる、各職種の転職術
薬事の転職

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『薬事』とは、化粧品発売にあたり
薬機法関連の業務を執り行う仕事

化粧品を販売するためにはいくつかの法的な手続きが必要となる。それらのプロセスを担うのが、化学系の学校または職場出身者に与えられる「総括製造販売責任者」の資格を持つ薬事。化粧品を販売する上で必須のポジションだが、数自体は少なく、数百名規模の企業で2~3人、100名以下の企業では1名程度の割合と言われる。理系職種で、男女比は半々程度。資格職・内勤職という側面からか、正社員だけでなくパートとして働く女性の姿も。

薬事の仕事内容

化粧品の販売前には必ず、薬機法に定義されている「化粧品」に該当する製品かどうかや、使用禁止成分が使用されていないかなどを確認しなければなりません。
また、広告表記に関しても、薬機法に準じた適切な表記がされているかどうかの確認が必須です。
薬事は、こうした法律に対して自社の商品が違法状態にならないよう、主に次の2つの業務を取り仕切ります。

  1. 薬事申請

    厚生労働省に対して、自社の新製品の特徴を説明する資料を作成し、申請業務の責任者として販売許可取得のための申請業務を行います。当局側から質問・指摘が寄せられた場合には、論理的かつ柔軟な交渉力で相手を納得させる折衝業務も発生します。
    申請時には、書類に自分の名前を責任者として記載するため、新人のうちは申請業務以外のアシスタント業務が中心になることもあります。

  2. 広告表記チェック

    キャッチコピーが薬機法に抵触していないか、成分表示に誤りはないか…商品の表記の合法性をチェックする業務。商品本体はもちろん、パッケージやPOP、ホームページ、カタログにいたるまで…あらゆる場面での文章表現に問題がないか、1つひとつ検閲を行います。

この他、広告表記チェックの延長として、商品企画やマーケティング部門から新しい商品の打ち出し方について相談を受けることも。

薬事の求人数

薬事は各社につき1~3名程度と、数の少ない職種ですが、そのぶん退職者が出た際には必ず欠員補充の募集が掛かり、求人の動きは意外と活発です(但し、薬事が居ないと会社が成り立たないため、欠員補充の場合は、即求人が発生して即採用が決定する超・急募案件であることも)。

全体的な求人数は決して多くありませんが、化粧品業界で「総括製造販売責任者」の有資格者も多くないため、他の職種と比べると、応募時の倍率は低めで、比較的内定が出やすいと言えます。

加えてここ数年は、化粧品・食品・製薬などの業界で、事故や偽装問題の発覚が相次いだことから、改めて薬事の存在を重視する企業が増加。業界内に薬事を増員してリスクを軽減する動きが広がり、ここ10年で最も求人が出やすい傾向にあると言われています。転職を検討している場合は、今が絶好のタイミングと言えるでしょう。

なお、薬事の求人は、いわゆる求人情報サイトに並ぶことが少ないため、募集がないように見えがちですが、人材紹介会社にはコンスタントに求人が寄せられています。これは、薬事の採用は少人数採用のため、求人情報サイトで募集を掛けようとすると、掲載料に対して採用できる数が少なく、割高になってしまうからです(同じ掲載料を掛けるなら、たくさん募集してたくさん採用する営業職などに活用したいというのがメーカー側の本音です)。

薬事の転職 こんなスキルがあると有利

薬事の応募条件は、薬事としての就業経験があればほぼクリアとなる場合が多いです。中でも「総括製造販売責任者」の経験がある人は重宝されるでしょう。未経験の場合、薬機法の施行規則第85条2項で定められた「総括製造販売責任者」の資格(※)を満たしているかどうかが分かれ目となります。

倍率もさほど高くないため、他の職種と比べると、比較的有利な転職がしやすいと言えます。

中でも、コミュニケーションスキルや折衝力がある人は評価されやすい傾向にあります。厚労省との折衝を円滑に行えることはもちろん、社内のクリエイティブ部門に対しても、「この表現は薬機法上NG」と衝突せず、「代わりにこういうコピーなら大丈夫」と代替案を出し、チームワークを発揮できる人が好まれるようです。

※薬機法の施行規則第85条2項より、以下いずれかに該当する場合は、「総括製造販売責任者」になることができます。

  1. 薬剤師
  2. 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する専門の課程を修了した者
  3. 旧制中学若しくは高校又はこれと同等以上の学校で、薬学又は化学に関する科目を修得した後、医薬品、医薬部外品又は化粧品の品質管理又は製造販売後安全管理に関する業務に3年以上従事した者
  4. 厚生労働大臣が前三号に掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者

薬事の履歴書や職務経歴書、面接時に工夫すると差がつくポイント

薬事経験者の場合、採用担当者に対してあなたの実力が正確かつスムーズに伝えられることが大切です。具体的に示せる下記三点は必ず明記しましょう。

  • 自分が責任者として申請を行っていたかどうか
  • 行った薬事申請の件数(月○件)
  • 広告表記チェックの件数(月○件)

加えて、『こんなスキルがあると有利』で挙げた折衝力を示す例として、
「厚生労働省から入った○○○という指摘に対し、×××という対応をし、無事に発売日を延期することなく許可を獲得することができた」
「商品企画が挙げてきた広告案が薬機法に抵触するため、代替案を提出し、発売までのプロセスを円滑化した」
などといったエピソードを伝えるのも良いでしょう。

薬事の転職理由

薬事の業務幅はある程度決まっているため、転職する際はキャリアアップよりも、就労環境の改善を理由にする人が多い傾向にあります。就労環境の改善とは、もちろん「給与・残業・勤務地」といった条件面も含まれますが、特に多いのは「薬事担当者として、誇れる環境に居たい」というもの。

自社の商品をめぐって厚労省と対立したり、広告表記をめぐって社内のクリエイティブ部門と衝突したり…メーカー随一の“法の番人”として活躍するわけですから、法律すれすれの方針を貫く職場より、誠実な職場や、薬機法に明るい職場の方が、やりやすさを感じるもの。前職で嫌と言うほど矢面に立たされたり、板挟みに遭った経験がある人ほど、企業・ブランドとのこうした相性は気にした方がよいでしょう。

反面、他の職種ほど、「憧れのブランドに行きたい」というニーズは多くない傾向にあります。

薬事の企業選びのポイント

転職で就労環境の改善が理由の場合、オフィス環境や社風といった、外部からは目に見えづらい情報をいかに入手するかが最重要となります。

人材紹介会社には、求人情報やサイト上で公開できないような内部情報、包み隠さない情報が数多く寄せられています。中には、企業側に対して独自リサーチを行い、実残業時間や給与システムの内訳、薬機法に対するメーカー側の姿勢…といった、そのものずばりな情報を所持している会社も。薬事の求人も求人情報サイトよりも多く保有しているため、情報収集に、まずは人材紹介を利用してみると良いでしょう。

この他にも自力でできる情報収集の方法として、実際に気になっているメーカーの商品を手に取り、広告や成分表示などのテキストを観察してみるのも有効です。これまで勤めてきた会社の表記・トーンと照らし合わせることで、その企業の薬機法に対する考え方を大まかに予想できるでしょう。

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